自己託送とは?仕組み・メリット・要件をわかりやすく解説

電気代の高騰や脱炭素への対応で、再生可能エネルギーの導入を検討する企業が増えています。その手段のひとつとして注目されるのが「自己託送」です。

しかし、「名前は聞くけれど仕組みがよくわからない」「自社でも使えるのか」と感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、自己託送の仕組み・利用要件・メリット・デメリット、そして近年の制度変更までをわかりやすく解説します。読み終える頃には、自社で利用できる可能性があるか、次に何を調べればよいかが判断できるはずです。

自己託送とは?仕組みをわかりやすく解説

まず、自己託送がどのような制度かを整理します。

自己託送の基本的な仕組み

自己託送とは、遠隔地にある自社の発電設備で作った電気を、電力会社(一般送配電事業者)の送配電ネットワークを使って、離れた場所にある自社の施設へ送る仕組みです。

通常、自家消費型の太陽光発電は電気を使う敷地内に設備を設置します。一方、自己託送を使えば、発電設備から離れた場所へも電気を届けられます。敷地内に設置スペースを確保できない場合でも、別の場所の発電設備で作った電気を活用できる点が特徴です。

ポイントは、あくまで「自社(または密接な関係のある事業所)で使う」ための制度であり、電力会社のように電気を売る制度ではないことです。

自己託送が制度化された背景

自己託送は、制度化される前は電力会社が自主的に行う送電サービスでした。これが法律に基づく制度になったのは2013年です。

きっかけは2011年の東日本大震災です。電力需給が逼迫したことを受け、企業などが持つ自家用発電設備の余剰電力を有効活用し、電力系統全体の供給安定性を高める狙いで、電気事業法の改正により制度化されました。

自己託送を利用する3つの要件

自己託送を利用するには、満たすべき要件があります。資源エネルギーの指針では、おもに次の3点が求められます。

要件

内容

売電目的でない

発電した電気は自社で使う。FIT・FIPとの併用は不可

密接な関係

発電者と電気の使用者が同一、または密接な関係にある

自ら設置・運用

自ら設置した発電設備を維持・運用している

それぞれ詳しく見ていきましょう。

売電目的でないこと(FIT・FIPとの併用は不可)

自己託送は、自社の施設に電気を供給するための制度です。そのため、発電した電気を売電することはできません。

余った電気を買い取ってもらえるFIT制度やFIP制度との併用もできないため、注意が必要です。

発電者と需要家が「密接な関係」にあること

原則として、発電設備の所有者と電気の使用者が同じ企業である必要があります。

ただし、グループ企業など「密接な関係」が認められれば、別の企業への供給も可能です。たとえば会社法上の親会社・子会社の関係や、代替の効かない原材料・製品のやり取りがある関係などが該当します。

自ら設置・維持運用している設備であること

発電設備を自ら設置し、維持・運用していることも要件です。後述するとおり、この点は近年の制度改正で特に厳しくなった部分です。

自己託送の3つのメリット

自己託送には、おもに次の3つのメリットがあります。

  • 電気代の削減・価格変動の影響を受けにくい

  • 再エネ賦課金がかからない

  • 脱炭素・ESG評価につながる

電気代の削減・価格変動の影響を受けにくい

自社の発電設備で作った電気を使うため、電力会社から購入する電気の量を減らせます。

燃料価格の高騰などで電気料金が上がる局面でも、自家発電分は市場価格の影響を受けにくくなります。電気代の削減と安定化の両方が見込める点は、大きなメリットです。

再エネ賦課金がかからない

自己託送は自家発電・自家消費の延長と位置づけられているため、再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の対象外とされています。

再エネ賦課金は電気の使用量に応じて電気料金に上乗せされる費用で、近年は上昇傾向にあります。これがかからない点は、コスト面で見逃せないメリットです。

ただし、この賦課金がかからない点は後述する制度厳格化の一因にもなっており、今後の制度動向には注意が必要です。

脱炭素・ESG評価につながる

太陽光などの再エネ設備を自己託送で活用すれば、自社の脱炭素化を進められます。

敷地内に設置スペースがない事業所でも再エネを利用できるため、RE100などの取り組みやESG評価の面でもプラスに働きます。

自己託送のデメリット・注意点

メリットの一方で、注意すべき点もあります。おもに次の2つです。

  • 計画値同時同量とインバランス料金

  • 要件厳格化による制度リスク

計画値同時同量とインバランス料金

自己託送を利用する場合、「計画値同時同量」のルールを守る必要があります。これは、あらかじめ立てた発電・需要の計画値と実績値を一致させる仕組みです。

太陽光発電は天候で発電量が変動するため、計画と実績にズレが生じやすく、ズレが大きいとインバランス料金が発生します。精度の高い発電・需要予測のノウハウが求められる点は、導入のハードルといえます。

なお、送配電ネットワークを使うため「託送料金」の負担も発生します。

要件厳格化による制度リスク(2024年〜)

自己託送は、賦課金がかからない点に着目した制度趣旨に反する利用が増えたことから、要件が厳格化されました。

2024年2月12日に「自己託送に係る指針」が改正され、おもに次の2点が明確化されました。

  • 他者が開発・設置した発電設備を譲渡・貸与(リース等)で受け、名義上の管理責任者となるケースは対象外

  • 需要場所内で、密接な関係のない他者(テナント等)へ電気を融通するケースは対象外

新しい要件は、2024年1月1日以降に受電地点の接続検討申込みを行う案件に適用されています。リースを活用したスキームなどは利用できなくなっており、自己託送が使える場面はより限定的になっています。今後も制度が見直される可能性があるため、最新の一次情報を確認することが大切です。

自己託送とオフサイトPPAの違い・使い分け

遠隔地の再エネを活用する手段としては、自己託送のほかに「オフサイトPPA」があります。両者の違いを整理します。

項目

自己託送

オフサイトPPA

発電設備

自社で設置・運用

発電事業者が設置・運用

契約

送配電事業者と直接

小売電気事業者を介する

再エネ賦課金

かからない

かかる

同時同量の管理

自社で負担

事業者側で対応

向くケース

自社で設備を持ち管理できる企業

設備投資・運用負担を抑えたい企業

自己託送は賦課金がかからない一方、設備の所有・運用や同時同量の管理を自社で担う必要があります。オフサイトPPAは賦課金がかかるものの、運用負担が小さく導入しやすいのが特徴です。

近年は要件厳格化により、政府も需要地外の再エネ調達手段としてオフサイトPPAの活用を促す方向にあります。どちらが適しているかは、自社の体制やコスト方針に応じて判断するとよいでしょう。

自己託送に関するよくある質問

最後に、よくある疑問にまとめて回答します。

個人・住宅でも自己託送は使えますか?

自己託送は基本的に企業・工場などの事業者向けの制度です。手続きや同時同量の管理が必要なため、一般家庭で利用されるケースはほとんどありません。住宅では、敷地内設置の自家消費や売電(卒FIT後の自家消費含む)が中心になります。

FIT・FIPと併用できますか?

併用できません。自己託送は売電を目的としない制度のため、買取制度であるFIT・FIPとは両立しない仕組みです。

導入にはどんな手続きが必要ですか?

電力広域的運営推進機関への登録(事業者コード等の取得)や、一般送配電事業者との契約手続きが必要です。要件確認には一定の期間がかかるため、早めの確認をおすすめします。

まとめ

自己託送は、遠隔地の自社発電設備で作った電気を送配電ネットワーク経由で自社施設へ送る制度です。電気代の削減や再エネ賦課金がかからない点が大きなメリットですが、計画値同時同量の管理が必要で、2024年の要件厳格化により利用できる場面は限定的になっています。

遠隔地の再エネ活用を検討する際は、オフサイトPPAとも比較しながら、自社の体制やコスト方針に合った方法を選ぶことが大切です。制度は変更される可能性があるため、導入前には資源エネルギー庁などの最新情報を必ず確認しましょう。


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